親子二世代で洋裁をされている方の裁ち鋏をまとめて研ぎました。
「長年連続使用しているので茶色のものは現在の外観を維持して欲しい」とのお話。
裁ち鋏・庄三郎大型28cm
長期保管で侵食性の赤錆が発生している場合は錆落としをおすすめしますが、拝見すると問題のない変色ですので、研ぎに徹することとしました。
磨耗した内側刃先
これまではグラインダの機械研ぎなので、内側に錆は少なく綺麗に見えます。
実際には目が荒いため見かけと違い、ざらついた感触で布が切れずに逃げてしまいます。
肉眼では研ぎ後のほうが圧倒的に滑らかで美しいのですが、写真では伝わらず残念・・
裁ち鋏・庄三郎24cm
やはり機械研ぎの内容が問題で、このままでは切れず仕事に差し支えると思います。機械研ぎに使われているグラインダの目は#180程度と思われ、肉眼でも筋がはっきり見えます。
そのままの粗さで鋭角にすると刃先が引っかかり、すぐに切れなくなるため鈍角にしてあるのも使いづらい原因になっています。
この職人は舞台衣装のドレスを作っておられ、見せて頂いた布は半透明の薄手や柔らかく細い繊維で織られたものでした。
この場合の裁ち鋏はかなり鋭角がふさわしく、気持ちよく噛み合うためには特に裏側を滑らかに研ぎ上げる必要があります。
研ぎ前後の刃角
裁ち鋏・長太郎系(無銘)
ネジが真鍮ではなく鋼製なのが長太郎系のわかりやすい特徴ですが、切先に向けて「ひねり」が入っているため独特の噛み合わせが職人に好まれるようです。
裁ち鋏・(無銘)
刃先側1/3から斜めに鋼が使われているタイプです。
グラインダなど目の粗い状態では鋼も軟鉄も同じように光って見えますが、天然砥石の細か目で仕上げると素材の違いがはっきり分かるようになります。
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